調査・分析
日本の上場企業の英語サイトは、無いのではなく、あるのに効いていません。UDXは2026年8月15日から16日にかけて、東京証券取引所に上場する内国株式のうちドメインを確認できた3,709社について、英語サイトを1社ずつ実際に開いて機械調査しました。公式サイトから英語ページに行き着けない企業が38.7%。行き着けた企業でも、76.7%は検索エンジンや生成AIが会社情報を読み取るための構造化データを持たず、78.8%はアクセス解析が入っていませんでした。本記事では、その全数値と、どこから手を付けるべきかを整理します。
この種の調査は、各社の日本語トップページだけを見て「多言語対応しているか」を数えるものが多くあります。しかしそれでは、海外の顧客が実際に見るページの中身は分かりません。今回は英語ページそのものを取得対象にしました。
英語サイトのURLは次の順で自動的に探しています。まずhreflangの宣言、次にページ内の英語版へのリンク、それでも見つからなければ/en/などのよくあるパスへの直接アクセス、最後にenで始まるサブドメインです。見つかったページのうち、日本語の文字が全体の10%未満で、かつラテン文字が200字以上あるものだけを英語サイトと認めました。日本語のページに英語の見出しが少し混じっているだけのものを数えないためです。
母集団3,709社のうち、公式サイトのトップページを取得できたのは3,609社でした。45社はアクセスを遮断されて判定できていません。以降の到達率はこの3,609社を分母にしています。英語サイトの中身に関する数値は、英語ページを確認できた2,151社が分母です。直訳表現と現地適応の調査は、翌日に再取得できた2,148社を対象にしています。
英語サイトを確認できたのは2,151社、59.6%でした。行き着けなかったのが1,398社で38.7%です。ほかに1.7%(60社)は、英語ページらしきものはあるものの中身がほとんど無く、事業内容を読み取れない状態でした。
ここで言う「行き着けない」は、機械が自動でたどれる範囲に英語ページが無かった、という意味です。人が時間をかけて探せば見つかる可能性は残ります。ただし海外の顧客も生成AIも、そこまで探しません。
どう見つかったかの内訳も、実務上の示唆があります。最も多かったのはページ内の英語版リンクをたどった1,518社。hreflangの宣言から見つかったのは274社。/en/などのパスに直接当てて初めて見つかったのが210社ありました。この210社は、リンクもhreflangも無く、URLを推測しなければ到達できなかった企業です。
| 状態 | 社数 | 割合 |
|---|---|---|
| 英語サイトを確認できた | 2,151社 | 59.6% |
| 英語ページに行き着けなかった | 1,398社 | 38.7% |
| 英語ページはあるが中身がほぼ無い | 60社 | 1.7% |
hreflangで英語版の存在を宣言していたのは386社、全体の10.7%でした。英語サイトを実際に持っている企業が59.6%いることを考えると、持っているのに宣言していない企業が5割近くいることになります。
宣言が無くてもリンクをたどれば人間は英語ページに行けます。しかし検索エンジンと生成AIにとっては、日本語ページと英語ページが同じ会社の別言語版だという対応づけが取れません。英語で検索されたときに日本語ページが返る、英語ページが別会社の情報として扱われる、といったことが起こり得ます。
hreflangの追加は、テンプレートのheadに数行を足すだけの作業です。今回見た指標の中では、費用と効果の差が最も大きい部類に入ります。
英語サイトを確認できた2,151社のうち、構造化データ(schema.org のJSON-LD)を英語ページに置いていたのは502社、23.3%でした。裏返すと76.7%には無いということです。
構造化データが無いと、生成AIは英語ページの本文から会社名・事業・所在地を推測するしかありません。推測が外れれば、同名の別会社と混同されたり、事業内容が古い説明のまま引用されたりします。日本企業の英語社名は表記ゆれが多いので、この影響は小さくありません。
メタディスクリプション(検索結果に出る説明文)は79.9%が設定していました。ここは埋まっているのに構造化データが無い、という組み合わせが多いのが実態です。人間向けの体裁は整えたが、機械向けの記述は手つかず、と読めます。
この調査で最も意外だったのがここです。英語ページにGoogleタグマネージャーが入っていた企業は56.8%ありました。ところがGA4が入っていたのは21.2%しかありません。計測の器は用意されているのに、数字を記録する仕組みが載っていない企業が3割以上あるということです。
タグマネージャーだけでは何も記録されません。この状態だと、英語サイトに海外から人が来ているのか、どの国から来ているのか、問い合わせまで進んだのかが分かりません。分からないので改善の判断材料も無く、経営会議で「英語サイトの効果」を聞かれても答えられない状態が続きます。
英語ページから問い合わせ先へのリンクがあったのは71.6%でした。逆に3割近くは、英語ページを読んで興味を持った人が、その場で連絡する手段を持っていません。
翌日に再取得できた2,148社について、日本企業の英語サイトに出やすい定型表現11種類を数えました。何らかの直訳サインが1つ以上あった企業は81.5%、3つ以上あった企業は34.6%です。
最も多かったのが「IR Information」という括りで54.8%。英語圏では通常「Investor Relations」です。次いで社長挨拶を直訳した表現が40.5%、会社概要を「Company Profile」で括るものが38.7%と続きます。「Recruit」を名詞として使う例が8.1%、「Top Page」が3.5%ありました。英語圏ではそれぞれ「Careers」「Home」が一般的です。
ここで正直に書いておくべきことがあります。これらは文法の誤りではありません。日本企業の英語サイトで長く使われてきたため、日本企業を見慣れた読み手には通じます。ただし初めてその会社を知る海外の担当者にとっては、探しているものがどこにあるか一瞬迷う要因になります。全角記号がそのまま残っていた企業が10.9%あったのも、日本語の編集環境で作られたまま公開された痕跡です。
| よく見られた表現 | 英語圏での一般的な言い方 | 該当企業 |
|---|---|---|
| IR Information | Investor Relations | 54.8% |
| 社長挨拶の直訳 | Letter from our CEO | 40.5% |
| Company Profile | About us | 38.7% |
| News Release | Press Release / Newsroom | 16.6% |
| Inquiry(導線名として) | Contact us | 13.1% |
| Recruit(名詞として) | Careers | 8.1% |
言葉を英語にすることと、その土地で使える形にすることは別の作業です。現地適応の痕跡を6種類調べました。
プライバシーポリシーへの導線があったのは62.1%、円以外の通貨に触れているのが33.2%、国や地域を選ばせる導線があるのが25.8%でした。国番号つきの電話番号を載せているのは9.4%、英語版を地域別に分けている(en-USとen-GBを別に持つなど)のは4.9%にとどまります。現地適応の痕跡が1つも無い企業が18.8%ありました。
実務上いちばん気になるのはCookie同意の仕組みで、16.9%でした。EU域内の利用者の行動を追跡する場合、GDPR(EU一般データ保護規則)は域外の企業にも適用され得ます。英語サイトにアクセス解析や広告タグを入れてEUから閲覧される状態は、この論点に入ります。解析を入れることと、同意の仕組みを用意することは同時に検討すべきです。今回の数字は、解析を入れている企業(GA4 21.2%)と同意の仕組みを持つ企業(16.9%)が近い水準にあることを示していますが、両者が同じ企業とは限りません。個別の判断は法務の確認が必要です。
母数40社以上の19業種で見ると、英語サイトへの到達率は医薬品が88.3%、電気機器が87.0%、輸送用機器が85.0%と続きます。低いのは小売業の31.4%、サービス業の44.6%、銀行業の46.7%でした。
製造業は海外に顧客がいる前提で英語サイトを作ってきた歴史があり、到達率が高く出ます。一方で情報・通信業は到達率49.5%と低めですが、到達できた企業の構造化データ実装率は33.1%で全業種中いちばん高い。作っている企業は機械可読性まで意識している、という分かれ方です。
銀行業は特徴的で、英語ページから問い合わせ導線があるのが11.4%しかありません。国内向けの窓口案内が中心で、海外からの新規接点を想定していない設計だと読めます。小売業は到達率が31.4%と最も低い一方、英語ページのタイトルに日本語が混ざっている割合が10.5%と高く、作りかけのまま公開されている例が目立ちました。
直訳サインが1つも無く、現地適応の痕跡が4つ以上あった企業として、武田薬品工業・三井化学・IDEC・任天堂・マークラインズ・JCRファーマ・アドバンテストなどがありました(2026年8月16日時点の公開サイトの観察)。業種も規模もばらついており、予算の問題だけではないことが分かります。
今回の数値からは、着手の順番がはっきり出ます。費用が小さく効果が大きいものから並べます。
第一に、英語版があるならhreflangで宣言することです。実装はテンプレートのheadに数行で、宣言している企業は10.7%しかありません。第二に、英語ページへの導線を日本語トップページの分かる位置に置くことです。今回210社は、リンクもhreflangも無くURLを推測して初めて見つかりました。第三に、GA4を英語ページに入れることです。タグマネージャーが既に入っている企業が56.8%あるので、その多くは設定を1つ足すだけで済みます。
そのうえで、構造化データ(会社情報のJSON-LD)を英語ページに置く、問い合わせ導線を英語ページに用意する、Cookie同意の仕組みを検討する、という順になります。ナビゲーションの表記を「Investor Relations」「Careers」「About us」に直すのは、この後で構いません。読み手が迷う要因ではありますが、まずそもそもページに到達され、機械に読まれ、反応が測れる状態を作るほうが先です。
本調査は2026年8月15日から16日にかけての機械調査であり、自動判定である以上、個別企業には誤判定が含まれ得ます。傾向を読む材料として使い、自社の状態は自社のサイトで確認してください。
Q. 英語サイトが無い企業が38.7%ということですか。
いいえ。「機械が自動でたどれる範囲に英語ページが無かった」が38.7%です。人が探せば見つかる場合もあります。ただし海外の顧客も生成AIもそこまで探さないため、実質的には無いのと同じ状態だと考えています。
Q. 前回の調査(llms.txt 4.5%、構造化データ29.0%)とは何が違いますか。
母集団は同じ3,709社ですが、見ている場所が違います。2026年7月20日の調査は各社の日本語トップページとドメイン直下が対象で、今回は英語ページそのものが対象です。前回のhreflang 12.5%は言語を問わない多言語宣言の有無で、英語版に限ると10.7%になります。
Q. 直訳サインが多いと、英語として間違っているのですか。
間違いではありません。文法上は正しく、日本企業を見慣れた相手には通じます。初めてその会社を知る海外の担当者が迷いやすい、という程度の差です。優先度は、到達性・機械可読性・計測より後で構いません。
Q. 自社がどの状態か知るには。
英語ページを開いてソースを表示し、hreflangの記述、JSON-LDのscriptタグ、GA4の測定IDがあるかを確認してください。UDXのDigital Intelligence Hubでは業種別の集計を公開しています。
UDXでは、英語サイトの到達性・機械可読性・計測を実際のページで診断し、着手順を優先度つきで整理してお渡ししています。
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