この記事のポイント
- 化粧品輸出は「日本側(薬機法・化粧品基準)→ 輸出先国の登録・届出 → ラベル/成分要件」の 3 層で考える
- 5 大規制体系:EU EC 1223/2009、米国 MoCRA(2022)、中国 NMPA 化粧品監督管理条例(2021)、韓国 MFDS、ASEAN 化粧品指令(ACD)
- 中国は普通化粧品(備案)と特殊化粧品(注冊)で費用・期間が桁違い。特殊化粧品は 200〜500 万円・12〜24 ヶ月
- EU は域内 Responsible Person(RP)の指定が必須。動物実験は成分・製品ともに完全禁止
- 米国 MoCRA 対応は施設登録・製品リスト登録・GMP 準拠・有害事象報告が義務化(2024 年以降)
- 「届出さえ済めば売れる」は誤り。ラベル 1 行・成分 1 つの違いで通関拒否は日常的に発生する
化粧品の海外輸出で最も多い失敗は「規制対応の見積もりが甘く、想定の 2〜3 倍のコストと期間がかかってキャッシュアウトする」パターンです。本記事では主要 5 規制体系(EU、米国、中国、韓国、ASEAN)の要件・費用・期間を整理し、中小化粧品メーカーが現実的に対応できるロードマップを示します。
結論:化粧品輸出は「①日本側の前提(薬機法・化粧品基準・輸出証明)→ ②輸出先国の登録/届出 → ③ラベル・成分要件」の 3 層で構成される。どの 1 層が欠けても通関できない。
日本国内で化粧品として製造販売するには、医薬品医療機器等法(薬機法)に基づく 化粧品製造販売業許可 と 化粧品基準(厚生労働省告示 第 331 号) への適合が必須。輸出時に追加で必要になるのは以下。
国によって「届出制(事後)」「許可制(事前審査)」「登録制(番号付与)」が異なる。費用と期間は数桁の差がある。
成分は INCI 名(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients) で多い順に表示するのが世界標準。ただし国ごとに「現地語併記」「使用期限の記載方法」「警告表示」が異なる。
結論:EU は世界で最も整備された化粧品規制を持つ。Responsible Person(RP)の指定なしに販売開始すると即時停止命令が下る。
| 項目 | 費用目安 | 期間 |
|---|---|---|
| Responsible Person 起用(年間) | 60〜180 万円 | 即日〜2 週間 |
| 安全性評価(PIF 作成) | 製品 1 SKU あたり 20〜50 万円 | 4〜8 週間 |
| CPNP 登録 | 無料(代行費 5〜10 万円/SKU) | 1〜2 週間 |
| ISO 22716(GMP)取得 | 200〜600 万円 | 6〜12 ヶ月 |
| EU 進出ベースライン(5 SKU) | 200〜500 万円 | 4〜6 ヶ月 |
結論:MoCRA 施行で米国化粧品規制は大幅強化された。Amazon US 等の主要販路は MoCRA 未対応製品の出品を順次制限し始めている。
| 義務 | 対象 | 期限 |
|---|---|---|
| 施設登録(Facility Registration) | 化粧品を製造・加工する全施設(米国外含む) | 既存施設は 2023/12/29 まで、新規は稼働後 60 日以内、2 年ごと更新 |
| 製品リスト登録(Product Listing) | 米国市場で販売する全製品 | 2024/7/1 以降、新製品は販売開始 120 日以内 |
| 安全性証明(Safety Substantiation) | 全製品 | 常時保管 |
| 有害事象報告(Serious Adverse Event) | 全製品 | 発生から 15 営業日以内 |
| GMP 準拠(Good Manufacturing Practice) | 全製造施設 | FDA は ISO 22716 をベースに最終規則策定中 |
| Brand Responsible Person の指定 | 全製品 | ラベルに記載 |
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| FDA 施設登録 | 無料(オンライン手続き) |
| 製品リスト登録 | 無料 |
| GMP 整備コンサル | 100〜500 万円(規模による) |
| 安全性証明データ整備 | 50〜200 万円 |
| ラベルレビュー(FDA 規制弁護士) | 5〜20 万円/SKU |
| 日焼け止め OTC モノグラフ対応 | 300〜800 万円 |
| 米国進出ベースライン(5 SKU、日焼け止め以外) | 200〜800 万円 |
結論:中国は 2021 年の制度改革で「普通化粧品(備案制)」と「特殊化粧品(注冊制)」の 2 トラックに整理された。費用・期間が桁違いなので、製品分類を最初に確定する必要がある。
対象:スキンケア、メイクアップ、フレグランス、シャンプー・コンディショナー、ボディケア等の一般製品
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き | NMPA 化粧品登録備案情報サービスプラットフォームでオンライン届出 |
| 期間 | 1〜3 ヶ月(書類完備時) |
| 費用 | 30〜80 万円/SKU(代行業者経由) |
| 必要書類 | 成分リスト、安全性評価書、製品処方、ラベルデザイン、GMP 証明、CIR 適合確認、境内責任者契約書 |
対象:染毛剤、パーマ剤、日焼け止め、育毛剤、美白剤、防臭剤、除毛剤、ニキビ・脂漏・口臭防止製品
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手続き | NMPA への事前審査・許可申請 |
| 期間 | 12〜24 ヶ月(有効性試験データ含む) |
| 費用 | 200〜500 万円/SKU(試験費含む) |
| 必要書類 | 普通化粧品の全項目 + 有効性試験データ(中国国内 GLP 認証ラボでの試験必須の場合あり) |
保税区を通じた個人輸入相当扱いで、NMPA 登録の代わりに「品目リスト(清単)登録」のみで販売可能。主要プラットフォーム(天猫国際、京東 Global、Kaola、Vipshop Global 等)が利用。
ただし以下の制限あり:
- 個人購入相当(1 回 5,000 元・年間 26,000 元)の枠内
- 法人顧客(BtoB)への販売は不可
- B2C 範囲を超える販路展開時には通常の NMPA 登録が必要
NMPA 注冊人/備案人の代理として中国国内で行政対応を行う 境内責任者 の指定が必須。多くは現地法人を持たない海外メーカーの場合、専門代行業者(広州伽藍、上海珀莱雅等の OEM 企業のグループ会社、または専門コンサル)を起用。月額 5〜30 万円が相場。
結論:韓国は K-Beauty 母国だが、外資ブランドの参入余地は大きい。MFDS への登録は比較的シンプルだが、機能性化粧品(美白・シワ改善・日焼け止め)は事前審査が必要。
| 項目 | 費用目安 | 期間 |
|---|---|---|
| 化粧品責任販売業者登録(代行) | 30〜80 万円 | 1〜2 ヶ月 |
| 通関予定報告(1 回) | 1〜3 万円 | 数日 |
| 機能性化粧品事前審査 | 100〜300 万円/SKU | 3〜6 ヶ月 |
| ラベル現地化 | 5〜10 万円/SKU | 2〜4 週間 |
結論:ASEAN は形式上 ACD で共通化されているが、各国の実施細目に差異がある。シンガポール → マレーシア → タイ → ベトナム → インドネシア の順で参入難易度が上がる。
| 国 | 監督機関 | 届出費用目安 | 期間 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| シンガポール | HSA | 1〜3 万円/SKU | 1 ヶ月 | 入門に最適。代理人要件のみ |
| マレーシア | NPRA | 1〜3 万円/SKU | 1〜2 ヶ月 | ハラル認証で差別化可 |
| タイ | FDA Thailand | 3〜5 万円/SKU | 2〜3 ヶ月 | タイ語ラベル必須 |
| ベトナム | DAV(医薬品管理局) | 3〜5 万円/SKU | 2〜3 ヶ月 | 公定書類のベトナム語化 |
| インドネシア | BPOM | 5〜10 万円/SKU | 3〜6 ヶ月 | ハラル認証(MUI)が事実上必須 |
| フィリピン | FDA Philippines | 3〜5 万円/SKU | 2〜3 ヶ月 | 英語ラベル可 |
ACD Annex II(禁止成分・約 1,500 種類)、Annex III(制限成分)、Annex IV(着色料)、Annex VI(防腐剤)、Annex VII(UV フィルター)に従う。EU と概ね同じだが、ヒドロキノン等で差異あり。
2024 年以降、化粧品もハラル認証の対象に。MUI(インドネシアウラマー評議会)系列の認証機関(LPPOM MUI 等)での審査が必要。
- 費用:30〜80 万円/SKU
- 期間:6〜12 ヶ月
- 対象:処方・製造工程・原料全てがハラル準拠であることの証明
| 項目 | EU | 米国 | 中国 | 韓国 | ASEAN(SG・MY) |
|---|---|---|---|---|---|
| 主要規制 | EC 1223/2009 | MoCRA(2022) | 化粧品監督管理条例(2021) | 化粧品法 | ACD |
| 監督機関 | 各国 Competent Authority | FDA | NMPA | MFDS | 各国当局 |
| 事前審査 | 不要(届出のみ) | 不要(届出のみ) | 普通:届出/特殊:許可 | 一般:届出/機能性:許可 | 届出のみ |
| 動物実験 | 完全禁止 | 規制なし | 免除可能(条件付き) | 規制あり | 規制なし |
| 代理人/RP | EU 域内 RP 必須 | Brand Responsible Person 必須 | 境内責任者必須 | 化粧品責任販売業者必須 | 現地代理人必須 |
| 一般的な参入コスト(5 SKU) | 200〜500 万円 | 200〜800 万円 | 150〜400 万円(普通化粧品) | 150〜500 万円 | 30〜100 万円 |
| 一般的な期間 | 4〜6 ヶ月 | 3〜6 ヶ月 | 1〜3 ヶ月(普通)/12〜24 ヶ月(特殊) | 2〜6 ヶ月 | 1〜3 ヶ月 |
結論:規制対応の実務は「①INCI 対照表整備 → ②国別禁止/制限成分チェック → ③ラベル設計 → ④届出/登録」の 4 ステップ。
社内で使用している全原料について、日本語成分名 → INCI 名 → CAS 番号の対照表を作成。原料サプライヤーから INCI 名と SDS(Safety Data Sheet)を取り寄せる。化粧品工業連合会の「化粧品成分・INCI 国際命名法対応表」が参考になる。
| 国 | 公式データベース | チェック項目 |
|---|---|---|
| EU | CosIng(EU 委員会データベース) | Annex II〜VII の禁止・制限 |
| 米国 | FDA Inactive Ingredient Database | 21 CFR 700 シリーズ規制 |
| 中国 | IECSC(中国既存化学物質目録)+ CIR | NMPA 公表の禁限用組分名単 |
| 韓国 | KCIA(韓国化粧品工業協会)データベース | MFDS 告示 |
| ASEAN | ACD Annex II〜VII | 各国独自規制 |
国別の必須記載事項を整理した ラベル設計マトリクス を社内で持つ。INCI 表示順、現地語、内容量単位、警告表示、消費期限(PAO:Period After Opening)、ロット番号、製造者/輸入者情報の有無を SKU × 国で網羅する。
代行業者(EU は Obelis 等、中国は専門コンサル、ASEAN は現地代理人)と契約し、書類提出 → 受領番号取得 → ラベルへの記載、までを完了。
ある中堅化粧品メーカーがインドネシア向けにスキンケア 12 SKU を出荷したが、1 SKU に含まれる ヒドロキノン誘導体 が BPOM の禁止リストに該当し、全 SKU が一時保留 → 該当 SKU のみ廃棄処分(在庫廃棄費含めて 200 万円超)。
回避策:出荷前に全 SKU × 全国の禁止/制限成分チェックを必ず実施。
EU 向け越境 EC を Shopify で開始した小規模メーカーが、RP 指定せずに販売開始。3 ヶ月後にフランス当局から通知が来て即時停止 + 在庫廃棄命令。Stripe 経由の決済も凍結された。
回避策:EU 向け販売開始前に必ず RP 起用 + PIF 作成 + CPNP 登録を完了。
「美白」効能を訴求するスキンケアを 普通化粧品(備案) として届出 → 後に NMPA から「特殊化粧品(注冊)対象である」と指摘 → 既存在庫 800 万円分を国内戻し or 廃棄。再申請に 18 ヶ月。
回避策:効能訴求文言を事前に NMPA リストと照合。「美白」「アンチエイジング」「日焼け止め」等の表現は注冊が必須と覚える。
規制対応の難易度・コスト・期間を考慮すると、入門は「香港 → 台湾 → シンガポール → マレーシア」の東アジア/東南アジアルートが推奨です。香港は化粧品規制が事実上ほぼなく、台湾 TFDA・シンガポール HSA は届出のみで 1〜3 万円/SKU・1〜2 ヶ月で完了します。中国(NMPA)・EU(EC 1223/2009)・米国(MoCRA)は規制対応に 3〜24 ヶ月・200〜800 万円が必要で、中長期計画として準備するのが現実的です。
EU の Responsible Person(RP)はどう選びますか?EU 域内に住所を持つ法人/自然人を指名する必要があり、多くの日本メーカーは専門代行業者を起用します。代表的な業者は Obelis(ベルギー)、Eurofins CTC、CE.way(ポーランド)、Biorius(ベルギー)等です。費用は年額 60〜180 万円が相場で、PIF 作成、CPNP 登録代行、ラベルレビュー、当局対応をパッケージで提供します。選定基準は①対応 SKU 数の柔軟性、②日本語対応の有無、③ラベル多言語化サポート、④審査落ち時の追加費用、の 4 点を比較してください。
米国 MoCRA への対応はいつまでに完了する必要がありますか?主要期限は以下です。①施設登録:既存施設は 2023 年 12 月 29 日、新規施設は稼働後 60 日以内、2 年ごと更新。②製品リスト登録:2024 年 7 月 1 日以降、新製品は販売開始 120 日以内。③有害事象報告:発生から 15 営業日以内(通年)。④GMP 規則:FDA が ISO 22716 をベースに最終規則策定中(2025〜2026 年公表予定)。Amazon US 等の主要販路は MoCRA 未対応製品の出品を順次制限しており、未対応のまま販売継続するとアカウント停止リスクが高まっています。
中国 NMPA で「特殊化粧品」に該当する効能訴求を教えてください。NMPA が定める特殊化粧品の効能カテゴリーは「染毛、パーマ、日焼け止め(SPF 訴求)、育毛、美白、防臭、除毛、ニキビ・脂漏・口臭防止」の 9 種類です。これらの効能を訴求する製品は注冊(許可)が必要で、12〜24 ヶ月・200〜500 万円のコストがかかります。逆に「保湿」「ハリ・ツヤ」「クレンジング」等の一般効能は普通化粧品(備案)で対応可能です。製品開発時に効能訴求文言を NMPA リストと照合し、戦略的にカテゴリーを選択してください。
動物実験フリー(Cruelty Free)を訴求するために何が必要ですか?主要な国際認証は①Leaping Bunny(米国系・最も信頼性が高い)、②PETA Beauty without Bunnies、③Cruelty Free International、④日本動物実験代替法学会(JaCVAM)認証等です。中国向けは PRC-CB 認証・FOI 認証等の動物実験免除認証取得を推奨します。費用は認証 1 つあたり 30〜80 万円、期間 3〜6 ヶ月。EU 域内では動物実験データを使用した成分・製品の販売自体が禁止されているため、Cruelty Free が事実上の前提です。米国 Sephora・Credo Beauty 等の主要セレクトショップも、Cruelty Free 認証を取得していないブランドは取扱対象外とすることが増えています。
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