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Glossierはなぜ広告費を抑えたままコミュニティで成長できたのか

作成者: UDX 編集部|Aug 14, 2026, 12:22:32 PM

海外マーケティング事例

Glossierはなぜ広告費を抑えたままコミュニティで成長できたのか

創業期のGlossierは、商品より先に読者を持っていました。広告費ゼロが永遠だったわけではありません。Emily Weiss氏は2010年に美容ブログInto The Glossを始め、2014年10月に化粧品ブランドGlossierを出しています。最初の顧客は、すでにブログを読んでいた人たちです。2023年2月には米加セフォラ約600店に並び、店頭でもコミュニティの声を拾っています。本記事では、UGCとコミュニティの設計原則と、日本企業への示唆をわかりやすく解説します。

当コラムで注目する用語
  • コミュニティ主導グロース:広告の前に、読者・顧客の声と投稿で需要と信頼を積むやり方。
  • UGC:User Generated Content。顧客が撮った写真やレビューなど、企業が作っていない発信。
  • DTC:Direct to Consumer。小売を介さず自社サイトから売る形態。
  • Into The Gloss:Weiss氏が2010年に始めた美容ブログ。Glossierの母体。
  • ステルスマーケティング規制:日本では2023年10月1日、景品表示法の告示で「広告である旨」の表示が義務化された。

Glossierは何の会社か

Glossierはニューヨーク発の化粧品ブランドです。スキンケア、メイク、香り、ボディケアを扱い、自社サイトと実店舗、のちにセフォラで売っています。創業者はEmily Weiss氏。2023年2月の会社発表では、Kyle Leahy氏が最高経営責任者です。Fortune(2023年5月)は、Weiss氏が日常の経営から退きエグゼクティブチェアに就いた、と書いています。

会社発表(セフォラ・カナダ、2023年2月)では、2014年に4つの基本アイテムで始まり、当時46品以上、Instagramフォロワーは270万超、とあります。数字は発表時点のものです。2026年現在の品数やフォロワーは、本稿では一次確認していません。

Into The Glossは何を集めていたか

Weiss氏は2010年、Vogue勤務と並行してInto The Glossを始めました(CNBC 2019年3月20日)。記事の型は、著名人や一般の「洗面台の棚」を見せ、実用品を語らせるものでした。レビュー記事をデスクで書くのではなく、使う人の棚を公開する、という編集です。

コメント欄と読者の投稿が、何が足りないかの材料になりました。モイスチャライザーがメイクの下で粉を吹く、リップが唇に乗らない、といった不満が、後の処方の種です。広告枠を買う前に、聞く場所を自社メディアで持っていた点が、後の成長の前提です。

ブログは今も別サイトとして残っています。商品カタログではなく、編集メディアです。日本で言うと、自社の「読み物」と「買うページ」を分けて持っていた、に近いです。

2014年、最初の4品はどこから来たか

The Cut(2014年10月6日)は、当日Glossierが化粧品ラインを出す、と報じています。最初の4品はモイスチャライザー、多用途バーム(Balm Dotcom)、スキンティント、ローズウォーターのミストです。Weiss氏は同記事で、Instagramでキャストしたモデルのキャンペーンと、Raymond Meier氏の商品写真に触れていました。CNBC(2019年)は製品名をSoothing Face Mist、Priming Moisturizer、Balm Dotcom、Perfecting Skin Tintと記しています。

発売は「ゼロからの認知」ではありません。4年分の読者が、最初の注文に回りました。The Cutは、10月13日にポップアップを開く予定、とも書いています。最初から店頭体験を併用しています。純粋なネット通販だけ、ではありません。

CNBCは、発売資金について12社中11社に断られた、とThe Cutを引いて書いています。本稿では回数の一次確認はしていません。確認できるのは、ブログ読者を先に持ち、少品目で始めた、という順序です。

広告より先に置いたコミュニティの型

型は3段です。1段目は編集(棚の公開とコメント)。2段目は商品化(読者が欲しがった少数SKU)。3段目はUGCの増幅(顧客写真をキャンペーンに載せる)。TechCrunchが報じた2019年のWeiss氏コメントは、「流通を自社で持ち、顧客をステークホルダーにする」という趣旨です。

UGCは無料の広告枠ではありません。誰の写真を、どの条件で、どこに出すかを決める運用です。The Cutが触れたInstagramキャスティングは、すでに「投稿する人を選ぶ」作業です。コミュニティと、採用したクリエイターは別です。社内では列を分けてください。

口コミが強い時期は、顧客獲得単価が下がりやすい、というのは後年の解説でよく出ます。ただし創業期の獲得単価を、本稿は一次資料で確定していません。数字なしで使える事実は、「先に読者がいた」です。

2019年の評価額は何を意味するか

TechCrunch(2019年3月19日)は、Sequoia Capital主導のシリーズDで1億ドルを調達し、評価額12億ドルになった、と報じています。WSJが先に伝え、Glossierが確認した、とあります。2018年の売上高は1億ドル、とTechCrunchは書いています。CNBCは、2018年に売上を倍以上にし1億ドルを超えた、という会社発表を伝えています。

12億ドルは、2019年3月の調達時の非上場評価です。2026年の企業価値ではありません。非上場のため、四半期ごとの公式売上も本稿では追えていません。稟議に載せるなら「2019年時点の調達時評価」と年を付けてください。

同じ記事は、当時約200人、実店舗は2店、累計調達は約2億ドル、シリーズDにはTiger GlobalとSpark Capitalが新規で入った、と書いています。コミュニティで伸びたあとに、店舗と組織を厚くした、という順序です。ブログだけで12億ドルになった、ではありません。

2023年、セフォラに出た理由

Glossierの発表(PR Newswire、2023年2月23日)では、同日より米加セフォラ約600店と、セフォラのサイト・アプリで販売を始めました。Kyle Leahy CEOは、「最初の小売パートナー」であり、発表前からセフォラ.comで最も検索されるブランドの一つだった、と述べています。コミュニティがセフォラに置いてほしいと言っていた、とも書いています。

発表文は、旗艦店のウェーブ型テスターと「You Look Good」ミラーをセフォラのゴンドラに置く、とも書いています。店頭でもブランドの型を残す、という判断です。Fortune(2023年5月)は、Leahy氏が会議で、顧客が実物を触りたがったこととセフォラ側の検索データが重なった、と話した、と伝えています。発売は期待を大きく上回った、という趣旨の発言もあります。売上金額の公式開示はありません。

コミュニティ主導は、DTCに閉じることではありません。声が「店で試したい」なら、小売に出す判断になります。セフォラのBeauty Insider(ポイントプログラム)に乗ることも、発表文は利点として挙げています。自社に会員基盤が薄いときの補完です。

コミュニティ主導の設計原則は3つ

1つ目は、買う前のメディアを自社で持つことです。Into The Glossは商品ページではありません。棚の話を週単位で貯め、処方の材料にしました。広告代理店のクリエイティブより先に、聞く場所が要ります。

2つ目は、UGCを「増やす」前に「誰の、どの写真を、広告扱いにするか」を決めることです。顧客写真を公式に載せるなら、日本では景品表示法のステルスマーケティング告示(2023年10月1日施行)で、広告である旨の表示が要ります。対象は事業者の表示です。報酬の有無にかかわらず、宣伝と分かるように書く運用が安全です。米国ではFTCのEndorsement Guidesが、重要な関係の開示を求めています。

3つ目は、コミュニティの要望をチャネルに落とすことです。2014年のポップアップ、自社店舗、2023年のセフォラは、いずれも「試せる場所」です。SNSのいいね数だけをKPIにすると、試したいという声を見逃します。

日本企業への示唆3点

自社の読み物を、商品より先に設計する

化粧品に限らず、B2Bでも「導入事例の棚」を先に公開できます。Glossierの洗面台に相当するのは、現場のツール一覧や、失敗した導入の条件です。広告出稿の予算より、月1本の取材記事の方が先、という順です。

UGC転載のルールを、キャンペーン前に書く

Instagramのリポストを「ファンの声」とだけ出すと、ステマ告示に抵触し得ます。許可の取り方、報酬の有無、#広告の付け方を、1枚の運用メモにしてください。米国向けならFTCの開示も同じメモに列を足します。

コミュニティが店頭を求めたら、DTCに固執しない

日本では@cosme、楽天、Amazon、百貨店が「試す・比べる」場所です。自社ECだけに閉じると、検索需要(セフォラ.comでGlossierが探されていた、と同型)を逃します。出す棚は1つに限り、在庫と価格の主導権を契約で残す、が実務です。

注意点——広告ゼロ神話と評価額

「広告費を抑えた」は、創業期の獲得がブログ読者中心だった、という意味に限定してください。後年のMeta広告やセフォラ出店後の販促費は、公開の損益計算書がありません。広告ゼロ企業、と書かない方が安全です。

12億ドルは2019年の調達時評価です。2021年以降の追加ラウンドや、2022年の人員整理は報道がありますが、本稿の主題はコミュニティ設計なので、金額は2019年の一次報道までに留めます。

日本で同じ型を真似るなら、先に聞くメディア、UGCの表示、試せる棚の3つです。ピンクの世界観や、Instagramのフォロワー数のコピーではありません。

よくある質問

Q. Glossierは広告を使わなかったのですか。

創業期はブログ読者とUGCが先行しました。広告費の年次開示はありません。2023年にはセフォラ約600店に出ており、店頭と検索も使っています。

Q. 日本でUGCを公式に使ってよいですか。

使えます。ただし景品表示法のステルスマーケティング告示(2023年10月1日〜)で、広告である旨の表示が必要です。許可と報酬の有無を先に決めてください。

Q. 中小が最初に真似すべきは何ですか。

商品を増やす前に、使う人の「棚」を聞く読み物を1本持つことです。評価額やフォロワー数のコピーではありません。

出典(2026年8月調査)