Googleで海外SEOをやったつもりが失敗する国——検索エンジンの国別シェアという見落とし
中国はBaidu、韓国はNaverと言われるが、その数字はどこまで正しいのか。2026年最新データで見る国別検索エンジンの実態と、Google一辺倒のSEO戦略が3ヶ月後に失敗する理由、日本企業が最低限確認すべきチェックポイントを解説します。
実務ガイド

「中国はBaidu、韓国はNaver」——海外SEOの基本として語られるこの一文自体は正しい。しかし、その先の数字を鵜呑みにすると、施策設計を誤る。2026年の韓国では、検索エンジンのシェアが「調べ方によって数字が真逆になる」という状態が起きている。日本のSEO担当者がそのまま海外を担当し、3ヶ月後に「効果が出ない」と気づく典型的な失敗パターンを、最新データとともに解説する。
中国:Baidu 44〜60%(測定手法により幅)・Google事実上使用不可。韓国:StatCounter基準でGoogle46%前後・Naver44%前後がほぼ拮抗(ただしモバイル単体ではNaver67%・デスクトップ単体ではGoogle63%と真逆)。台湾・インドネシア・米国:Google90%超。
起点——「海外向けSEO」を一括りにしていないか
日本企業が越境ECやグローバル展開を検討する際、SEO担当者が「日本と同じやり方を英語や現地語に翻訳すればいい」と考えるケースは珍しくない。しかし検索エンジンの勢力図は国ごとにまったく異なる。✅ UDX method-datalakeの失敗パターン辞書によれば、この「現地検索エンジンの国別差異の無視」は海外進出における主要な失敗要因の一つに分類されている。まず押さえるべきは、Googleが「世界標準」ではなく「多くの国で強いが、一部の大国では通用しない」プレイヤーだという前提だ。
中国——Baiduに最適化しなければ存在しないのと同じ
✅ 中国本土ではGoogleは事実上アクセス不可(VPN経由を除く)で、検索市場はBaiduを中心に展開している。ただしBaiduのシェア自体、測定機関によって幅がある。✅ 2026年の複数の調査では、Baiduのシェアを「約44%」(StatCounter系)〜「約60%」(CNNIC=中国インターネット情報センター系)という異なる数値で報告しており、残りをBing・Sogou(捜狗)・Shenma(アリババ系)・Haosou(360)等が分け合う、より分散した構造になりつつある。⚠️ どの数値を採用するかより重要なのは、「Baidu一本足打法」では取りこぼしが出るほど市場が分散化しているという構造変化そのものだ。加えて中国はモバイルファースト(検索トラフィックの8割超がモバイル経由)で、小紅書(RED)等のアプリ内検索も購買行動の起点として機能する。
韓国——「Naverが60%」という数字はもう古い
✅ 韓国の検索市場は2026年時点で、日本企業が最も誤解しやすい市場の一つになっている。ブラウザベースの計測を行うStatCounterは2026年6月時点でGoogle45.91%・Naver43.68%とほぼ拮抗、直近1年ではむしろGoogleが優勢な月が増えている。✅ 一方、現地のパネル調査(InternetTrend)はサイト流入経路ベースで計測するため、Naverが55〜63%程度とする報告もある。この差は「何を検索エンジンのシェアとして数えるか」という測定方法の違いに起因する——StatCounterはブラウザのトラッキングスクリプトに依存しモバイルアプリ内検索を捕捉しにくい一方、InternetTrendはウェブサイトへの流入元を計測するため、Naverアプリ経由の検索行動をより広く含む。✅ さらに重要なのはデバイス別の内訳で、2026年のデータではモバイル単体ではNaver67%・Google30%、デスクトップ単体ではGoogle63%・Naver22%と、デバイスによって支配的なエンジンが真逆になる現象が確認されている。「韓国はNaver対策をすればいい」という単純化は、この構造を見落としている。
デバイスで真逆になる国がある、という事実
韓国の事例が示すのは、一国の中でも「モバイルの勝者」と「デスクトップの勝者」が異なりうるという、より一般的な論点だ。BtoC商材でモバイル経由の購買が主流の業種であれば、韓国ではNaver対策(Naverブログ・カフェ最適化、Naverショッピング登録)を優先すべきだが、BtoB商材で意思決定者がデスクトップで比較検討する業種であれば、Google SEOの比重を高める判断もありうる。単一の「シェア○%」という数字だけでは、この使い分けの必要性が見えてこない。
AI検索という第三の変数——ChatGPTがすでに検索行動に入り込んでいる
韓国の事例をさらに複雑にしているのが、生成AIを使った検索行動の増加だ。✅ 2026年の調査では、韓国のユーザーのChatGPT利用率が54.5%、Gemini利用率が28.9%に達しているとの報告があり、Naver自身も2025年に自社検索結果へAI要約機能「AI Briefing」を組み込んで対抗している。従来型の検索エンジン(Google・Naver)のシェア争いだけを見ていると、その外側で「そもそも検索エンジンを開かず、ChatGPTやPerplexityに直接質問する」というユーザー行動が並行して拡大している事実を見落とす。✅ 韓国以外でも、AI検索アシスタント経由の流入は主要な調査各社が「小さいが急拡大中」の変数として個別に計上し始めており、国別SEOマトリクスに「AI検索での言及されやすさ(LLMO:大規模言語モデル最適化)」という項目を加える必要性が高まっている。⚠️ ただしAI検索の実際の購買転換への影響度は測定方法が発展途上であり、本稿執筆時点では「無視できない規模になりつつある」という定性的な位置づけに留める。
台湾・インドネシア・米国——Googleが強い国でも安心はできない
✅ 台湾・インドネシアではGoogleが検索市場の90%超を占め、日本と同様のGoogle SEO設計が有効という点では見立て通りだ。ただし油断は禁物で、台湾では検索キーワードを必ず繁体字で設計する必要があり簡体字は逆効果になりうる。インドネシアもGoogleが圧倒的である一方、EC購買はShopee・TikTok Shop等のプラットフォーム内検索が並走しており、Google SEOだけで購買行動の全体をカバーできるわけではない。✅ 米国もGoogleが90%超のシェアを持つが、これは「勝ちやすい」ことを意味しない。世界最大級の広告主・SEO事業者が競合するため、検索結果の上位を狙うキーワード競争は世界最激戦区であり、Google一強だからこそオーガニックだけに頼らず有料広告(Google Ads)との併用が現実的な選択になる。
なぜ「一つの数字」を信じると3ヶ月後に後悔するのか
ここまでの事例に共通する失敗の型は明確だ。日本のSEO担当者がそのまま海外を兼務し、「この国はこのエンジンが強い」という一次情報を確認せずに、日本と同じ検索エンジン・同じ手法で施策を展開する。韓国のように測定方法によってシェアの見え方が変わる国では、古い一次情報(「Naverが60〜65%」等)をそのまま信じて設計すると、実際にはGoogleとの拮抗、あるいはデバイスによる逆転という実態とズレた施策になる。予算を投下して3ヶ月が経過した頃、流入もコンバージョンも想定を大きく下回っていることに気づく——これが典型的な失敗プロセスだ。
国別SEOマトリクスの作り方——最低限確認すべき5項目
①主要検索エンジンの現在シェア(複数ソースで確認)。単一の調査機関・単一の年のデータだけで判断せず、直近1年以内の複数ソースを突き合わせる。
②モバイル/デスクトップ別の内訳。合算シェアだけでなく、自社商材の主要接点(モバイル中心かデスクトップ中心か)に合わせた内訳を確認する。
③現地語の文字体系・表記ゆれ(繁体字/簡体字等)。台湾・香港と中国本土のように、同じ言語でも文字体系が異なる市場では表記の統一が必須。
④EC・SNSプラットフォーム内検索の重要度。Shopee・TikTok Shop・Amazon等、検索エンジン外の「もう一つの検索窓」の比重を確認する。
⑤現地の広告開示・データ規制。SEO単体の問題ではないが、現地の検索連動広告や口コミ活用には別途規制が及ぶ場合がある。
日本企業が陥りやすい誤解
もっとも根深い誤解は、「日本でSEOに詳しい担当者なら、海外のSEOも延長線上でできる」という前提そのものだ。日本国内のSEO知見(Google中心の技術的知見)は、Googleが強い国(米国・欧州・インド等)では一定程度転用できるが、Baidu・Naverのような別エコシステムでは評価アルゴリズム自体が異なり、ゼロから現地設計が必要になる。また韓国の事例のように、同じ国でも「シェアが安定している」という前提自体が崩れつつある市場もあり、四半期に一度は最新データを再確認する運用が望ましい。
日本企業への示唆——3点に整理
示唆1:進出国ごとに「複数ソース×直近1年」でシェアを再確認してから予算配分を決める。1つの記事・1つの調査機関の数字だけで意思決定しない。
示唆2:モバイル/デスクトップ別の内訳がある国では、自社商材の主要接点に合わせて重み付けを変える。合算シェアだけを見て「Naver対策だけで十分」「Google対策だけで十分」と単純化しない。
示唆3:検索エンジンだけでなくEC・SNSプラットフォーム内検索も同時に設計する。特にライブコマース比率が高い東南アジア市場では、検索エンジンSEOとプラットフォーム内SEOの二本立てが標準になりつつある。
よくある質問
Q. 韓国は結局Naverが強いのですか、Googleが強いのですか?
A. 2026年時点では両者がほぼ拮抗しており、測定方法によって順位が入れ替わります。✅ ブラウザベースの計測(StatCounter)ではGoogleがやや優勢、現地パネル調査(InternetTrend)ではNaverが優勢と、単一の答えはありません。モバイルではNaver、デスクトップではGoogleが強いというデバイス別の傾向を踏まえた設計を推奨します。
Q. 中国はBaidu対策だけで十分ですか?
A. Baiduは依然として最大手ですが、✅ 2026年時点でシェアは44〜60%程度(測定手法により幅)に留まり、Bing・Sogou・Shenma等への分散が進んでいます。Baiduを中心としつつ、複数の検索・EC内検索を組み合わせる設計が現実的です。
Q. 台湾・インドネシアのようにGoogleが強い国なら、日本と同じSEO手法で問題ないですか?
A. 検索エンジン自体はGoogleで共通していても、✅ 現地語のキーワード設計(台湾なら繁体字必須)やEC内検索(インドネシアならShopee/TikTok Shop内SEO)への対応は別途必要です。「エンジンが同じ=手法も同じ」とは限りません。
Q. 検索エンジンのシェアはどのくらいの頻度で確認し直すべきですか?
A. 韓国のように短期間でシェアが変動する市場もあるため、最低でも半年に1回、変化の大きい市場では四半期に1回の再確認を推奨します。
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StatCounter GlobalStats(Republic of Korea・2026年6月)https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share/all/south-korea / Webiano Digital「Baidu beats Google in China, not across Asia」(StatCounter 2026年4月データ引用)https://webiano.digital/baidu-beats-google-in-china-not-across-asia/ / SEOX Blog「네이버 vs 구글 코리아 2026」(StatCounter・InternetTrend比較)https://soyoyu.cc/blog/naver-vs-google-korea-2026-market-share / NOAH「Naver vs Google in Korea 2026」https://noahgroup.co.kr/articles/naver-vs-google-korea-search.html / SerpSculpt「Search Engine Statistics by Country 2026」https://serpsculpt.com/search-engine-statistics-by-country/ / Digital Applied「Search Engine Market Share 2026」https://www.digitalapplied.com/blog/search-engine-market-share-2026-global-data / Atlas UDX method-datalake `global/failure_patterns.yaml`(FP-002・country/*/digital_landscape.yaml)/ 調査・検証時点:2026年8月2日。
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