BtoB企業の海外向けサイト制作、発注先の選び方|見積の読み方と確認する8点
BtoB企業の海外向けWebサイトは、Web制作会社・翻訳会社・海外デジタル支援会社のどこに頼むかで結果が変わります。3タイプの違い、見積書を3つの費目に分解する読み方、発注前に確認する8点、公開後の運用を誰が持つかの決め方を2026年8月時点でまとめました。
実務ガイド

海外向けサイトの発注先は大きく3タイプあり、どこに頼むかで「翻訳されたサイト」になるか「問い合わせが来るサイト」になるかが分かれます。Web制作会社は見た目と実装に強い一方で国別の検索設計が弱くなりがちで、翻訳会社は言語の精度に強い一方で技術実装と集客を持ちません。両方をつなぐ役割が抜けたまま発注すると、公開はできても海外からの問い合わせは増えません。本稿では、3タイプの違い、見積書の読み方、発注前に確認する8点を整理します。
BtoB海外サイトとは——BtoC向けサイトと何が違うのか
BtoB向けの海外サイトは、その場で買ってもらうためのものではありません。相手企業の担当者が「この会社に問い合わせてよいか」を判断するための材料を置く場所です。判断する人は多くの場合、購買・技術・法務など複数の立場にまたがります。したがって、必要な情報は製品の魅力よりも、仕様・認証・納期・実績・問い合わせ後の流れといった、確認のための情報が中心になります。
この違いは設計に直結します。BtoC向けであれば商品画像とカートが主役ですが、BtoBでは仕様書のダウンロード、規格や認証の一覧、導入事例、そして問い合わせフォームが主役です。「見た目のよい英語サイト」を作っても、この4つが薄いと商談には至りません。
発注先には3つのタイプがある
実務上、相談先は次の3つに分かれます。それぞれ得意領域と抜けやすい領域があります。
① Web制作会社
デザインと実装に強い。一方で、対象国ごとの検索の違い、hreflangなどの多言語向けの技術要件、翻訳品質の担保は範囲外になることが多い。既存の日本語サイトの英語版を作る、という依頼になりやすい。
② 翻訳会社・ローカライズ会社
言語の精度に強い。専門分野の翻訳者を抱えている場合は業界用語にも対応できる。一方で、サイトの情報設計・技術実装・公開後の集客は範囲外であることが多い。
③ 海外デジタル支援会社
対象国の選定から設計・実装・集客・計測までを通しで扱う。一方で、会社ごとに強い工程が違うため、どこまで内製で持っているかを確認する必要がある。
どれが正解ということではなく、抜ける工程を誰が埋めるかを発注前に決めておくことが重要です。①に頼むなら検索設計と翻訳監修を別途手当てする、②に頼むなら実装と集客を別途手当てする、という具合です。3社に分けて発注すること自体は可能ですが、その場合は工程間の調整を自社が担うことになります。その工数も見積に入れて比較してください。
確認点①:情報設計から作り直すか、日本語サイトの翻訳で終わるか
最初に確認すべきはここです。「日本語サイトの構成のまま、文言を英語にする」提案と、「対象国の相手が知りたい順に、構成から組み直す」提案では、費用も期間も成果も別物になります。日本語サイトは日本の商習慣に合わせて作られています。会社案内が先に来て、製品仕様が奥にある構成は、仕様から先に確認したい海外の技術担当者には向きません。提案を受けたら「サイトマップは日本語版と同じですか、変えますか」と一言聞いてください。
確認点②:技術要件を実装できるか
Google検索セントラルの公式ドキュメント「多地域、多言語サイトの管理」(2026年8月7日閲覧)は、言語や地域ごとに固有のURLを持たせることを求めています。選べる方式は国別ドメイン(example.de)、サブドメイン(de.example.com)、サブディレクトリ(example.com/de/)の3つで、URLパラメータ(site.com?loc=de)での切り替えは推奨されていません。あわせて、各言語版の対応関係を伝えるhreflangは、自己参照を含めること、グループ内で相互に参照し合うこと、絶対URLで書くこと、x-defaultを置くこと、正規URL(canonical)の指定と整合させることが求められます。
これらが実装されていないサイトは珍しくありません。UDXが日本の上場企業を対象に行った調査(2026年7月20日時点・ドメインが解決できたプライム上場3,709社)では、hreflangを実装していた企業は464社・12.5%にとどまりました。見積に「多言語対応」とだけ書かれている場合、この要件が含まれるかは必ず確認してください。
確認点③:業界の専門用語を誰が監修するか
BtoBのサイトでは、製品仕様・材質・規格・認証名など、誤訳が実害につながる語が本文の大半を占めます。機械翻訳で下訳を作ること自体は問題ありませんが、その後に業界を分かる人が目を通す工程が要ります。「ネイティブチェック込み」という一行があったら、そのレビュアーが業界知識を持つのか、対象は全ページか主要ページのみか、規格名や認証名の表記ルールをどう統一するのかまで確認してください。用語集(グロッサリー)を作る工程が入っていれば、その会社は分かっています。
確認点④:問い合わせフォームがCRMにつながるか
意外に抜けやすいのがここです。海外からの問い合わせは時差の関係で夜間に届きます。フォームの内容がメールで1通届くだけの設計だと、誰が対応したのか、その後どうなったのかが残りません。フォーム送信が顧客管理システム(CRM)に記録され、対応状況が追える状態になっているかを確認してください。あわせて、どのページから来た人が問い合わせたのかが分かるようになっているかも重要です。これが分からないと、どのページに投資すべきかを後から判断できません。
確認点⑤:AI検索に載る設計になっているか
2026年8月時点では、海外の担当者が製品を調べる入口が検索エンジンだけではなくなっています。ChatGPT・Claude・Perplexity・GoogleのAI検索は、自ら回答文を作り、その根拠として特定のサイトを引用します。ここに名前が出なければ、比較検討の候補にすら入りません。
対策として実務で行うのは、AIクローラーの受け入れ方針をrobots.txtで明示すること、AI向けの案内ファイルであるllms.txtを置くこと、schema.orgの構造化データを実装すること、そして見出しの直後に結論を置く書き方に整えることの4つです。前述のUDXの調査では、llms.txtを設置していたプライム上場企業は167社・4.5%、構造化データを実装していたのは1,075社・29.0%でした。まだ大半の企業が手をつけていない領域です。
確認点⑥:CMSの選定理由を説明できるか
海外向けサイトで使われる仕組みは、WordPress、HubSpot CMS、Headless CMSなど複数あります。どれが優れているという話ではなく、言語の数・ページ数・更新の頻度・誰が更新するかで適した選択が変わります。目安として、対応言語が少なくページ数も限られるならWordPressの拡張で足りることが多く、言語数やページ数が増えるほど構造を分けて管理できる仕組みが必要になります。提案されたCMSについて「なぜこれを選んだのか」を聞き、自社の条件に照らした説明が返ってくるかを確認してください。「弊社はこれで作っています」という答えしか返らない場合は、選定していないということです。
確認点⑦:公開後の運用を誰が持つか
海外向けサイトは、公開した日が起点であって終点ではありません。製品追加、規格改定、価格改定のたびに翻訳が発生します。この更新を誰がやるのかを契約前に決めていないと、公開から半年で情報が古いサイトになります。自社で更新するなら、日本語しか分からない担当者でも操作できる状態になっているか。制作会社に依頼するなら、1回あたりいくらで何営業日かかるか。この2点を先に確認してください。
確認点⑧:実績の中身を検証できるか
「海外向けサイトの制作実績◯◯社」という数字は、判断材料としてはあまり役に立ちません。聞くべきは、どの国向けに作ったか、その後に問い合わせがどう変わったか、何が難しかったかの3点です。守秘義務で社名を出せない場合でも、業種と指標の動きは説明できるはずです。あわせて、公開されている実績サイトがあれば、そのサイトのhreflangが正しく実装されているかを自分で確認できます。ブラウザでページのソースを表示し、hreflangで検索するだけです。
見積書の読み方——3つの費目に分解する
海外向けサイトの見積は、次の3つに分解して比較すると差が見えます。
① 設計費:対象国の選定、サイトマップ設計、キーワード調査、技術要件の定義。ここが薄い見積は、日本語サイトの翻訳版になる可能性が高い。
② 制作費:デザイン、コーディング、翻訳、CMSへの実装。ページ数と言語数で変動する。翻訳の単価と対象文字数が明記されているかを確認する。
③ 運用費:公開後の更新、計測、改善。月額で提示されることが多い。何時間分・何回分の作業が含まれるかを確認する。
3社から見積を取ると、同じ「500万円」でもこの配分が全く違うことがよくあります。設計費がゼロで制作費だけの見積と、設計に3割を割いた見積では、出来上がるものが別物になります。
費用の目安(2026年8月時点)
あくまで一つの目安として、UDXが提示している価格帯を挙げると、多言語のランディングページが60万円から、コーポレートサイトの英語版が250万円から、多言語CMSとSEOを含むフルパッケージが500万円からです。金額そのものより、その金額に上の3費目のどれがどこまで入っているかを各社で揃えて比較することのほうが重要です。相見積を取る際は、対象国・言語数・ページ数・翻訳対象文字数の4つを同じ条件で提示すると、比較できる見積が返ってきます。
発注前チェックリスト
① 対象国と対象読者を先に決める
「海外向け」ではなく「どの国の、どの立場の人向けか」まで決めてから相談する。
② サイトマップを作り直すか、翻訳で済ませるかを確認する
提案の前提を明確にする。ここで費用も期間も変わる。
③ hreflangと正規URLの実装が含まれるかを確認する
「多言語対応」の一行に含まれているとは限らない。
④ 翻訳レビュー担当者の業界知識と、用語集の有無を確認する
規格名・認証名の表記統一まで含むか。
⑤ フォームがCRMにつながるかを確認する
どのページから来た人が問い合わせたかまで分かる状態にする。
⑥ AI検索への対応が含まれるかを確認する
robots.txt・llms.txt・構造化データ・書き方の4点。
⑦ 公開後の更新体制を契約前に決める
自社更新なら操作可能か、依頼なら単価と納期。
⑧ 見積を設計費・制作費・運用費に分解して比較する
総額ではなく配分を見る。
UDXの場合——どこまでを引き受けるか
UDX株式会社は、BtoB企業の海外向けWebサイト制作と多言語SEOを手がける日本の支援会社です。2021年11月設立、福岡本社に加えて東京・大阪・盛岡の4拠点体制で、対象国の選定から、サイトマップの再設計、翻訳と業界監修、hreflangを含む技術実装、AI検索への対応、公開後の計測と改善までを一社で担当します。上の3タイプでいえば③にあたり、①と②の間で抜けやすい工程を自社で持っている点が特徴です。多言語のランディングページ60万円から、英語版コーポレートサイト250万円から、フルパッケージ500万円からで対応しています。判断材料としてお使いください。
まとめ——「作れるか」ではなく「抜ける工程を誰が埋めるか」
海外向けサイトの発注でつまずく原因の多くは、発注先の技術力不足ではありません。設計・翻訳・実装・集客・運用という5つの工程のうち、誰も担当していない工程があることです。どの会社に頼むにしても、この5工程を紙に書き出し、それぞれの担当を埋めてから契約してください。空欄が残ったまま発注すると、その空欄が公開後に問題として現れます。
よくある質問
Q. 日本語サイトを英語に翻訳するだけでは、なぜ不十分なのですか?
A. 日本語サイトは日本の商習慣に合わせた構成になっているためです。会社の信頼性を先に伝え、製品の詳細を後に置く構成は、仕様から先に確認したい海外の技術担当者には合いません。また、日本語で検索される言葉と現地語で検索される言葉は一致しないため、翻訳しただけでは検索でも見つかりません。
Q. 既存の日本語サイトを活かして英語版を追加できますか?
A. 多くの場合は可能です。判断のポイントは、現在のCMSが言語別に固有のURLを持てるか、hreflangを設定できるか、更新の運用に無理がないかの3点です。URLパラメータやクッキーで言語を切り替える方式の場合は、URL構造の変更が必要になります。
Q. 対応言語は最初から複数入れたほうがよいですか?
A. まず1〜2カ国に絞ることをおすすめします。言語を増やすほど制作費と運用負荷が増える一方で、成果が出るかどうかは対象国の選び方で決まります。1カ国で問い合わせの流れを作ってから、同じ型を横展開する進め方のほうが、結果的に費用対効果が高くなります。
Q. Web制作会社と翻訳会社に別々に頼むのは避けるべきですか?
A. 避けるべきというより、その場合は工程間の調整を自社が担うことになる点を織り込んでください。翻訳の納品形式、用語集の共有、実装後の表示崩れの確認など、間に立つ作業が発生します。社内に担当を置けるなら選択肢として成立します。
Q. 公開後、成果はどの数字で見ればよいですか?
A. 問い合わせ件数を主指標にしてください。あわせて、検索での表示回数・クリック率・国別の訪問数を見ると、どこで詰まっているかが分かります。表示はあるがクリックされない場合はタイトルと説明文の問題、クリックはあるが問い合わせがない場合はページ内容と導線の問題です。この切り分けができる計測を、公開前に設定しておくことが重要です。
海外向けサイトの構成・費用の考え方や、AI検索への対応状況の調べ方は、UDXニュースレターでお届けしています。
UDXニュースレターに登録する →主な出典
Google 検索セントラル「多地域、多言語サイトの管理」(Google for Developers・2026年8月7日閲覧。URL構造3方式、URLパラメータ非推奨、hreflangの自己参照・相互参照・絶対URL・x-default、canonicalとの整合について参照)/ UDX株式会社「UDX Digital Intelligence Hub」日本の上場企業 AI検索対応調査(調査時点2026年7月20日・母数はドメイン解決済のプライム上場3,709社・各社公式サイトのrobots.txt/llms.txt/トップページHTMLを機械取得して判定。hreflang 464社12.5%、schema.org 1,075社29.0%、llms.txt 167社4.5%)/ llmstxt.org(llms.txt 標準仕様)/ 価格帯はUDX多言語サイト制作の2026年8月時点の公開価格。/ 調査・検証時点:2026年8月7日。
UDX Mail Magazine
海外デジタルの実務ノウハウを、メールで無料でお届けします
メールアドレスを入れるだけで登録完了。しつこい営業はいたしません。いつでも配信解除できます。
この記事の内容を、貴社に当てはめると?
まず無料セルフチェック(20問・5分・登録不要)で現在地を確認。 「うちの製品、海外で売れるか」を確かめたい方には、プロが個社別に診断する海外売れる度 個社診断(¥10万・3-5営業日)をご用意しています。